大西つねき著「私が総理大臣ならこうする 日本と世界の新世紀ビジョン」(白順社)を読んだので感想を書きます。以前同著者の「希望」について書きましたが、本書は「希望」をよりわかりやすくしたバージョンです。

大西つねきの真骨頂
私が大西つねきさんの真骨頂だと思うのは次のとおりです。
- 難しい経済用語をほとんど使わずに、マクロ経済をわかりやすく説明する
- わかりやすいのは本質を捉えているから
- 大西つねきさんの講演を聞いた人は、経済学者や評論家よりも本質を理解するようになると思う
- 多くのことを本質から考えている
- 金融経済だけではなく、人間とは何かまで深掘りしている
- 長期スパンで考えている、少なくとも数十年先まで読んでいる
- 世界を見据えている
- 世界の同じビジョンを持つ人達と手を結ぶことを考えている
- 自ら先頭に立つ覚悟がある
- 変革に対する考え方
- 人々はすでに変わっているが、それを明確に表現できていない
- そのような人々に対して大西つねきさんが言語化してあげると、人々は晴れ晴れとしたようなワクワクした気持ちになる
- まるで、悩みを人に打ち明けると心が軽くなるような感じ
- 本書で提示している金融財政政策は過渡的なものであり、最終的にはさらに理想的なものになると考えている
基本理念
国が最も大事にしなければならないのは、国民一人ひとりの時間と労力であるとしています。
大西つねきさんがよく出される例が一億円の穴掘り事業というものです。無意味な穴掘り事業に一億円の費用がかかったとして、このとき無駄になるのは一億円ではなく、それに費やした時間と労力である、と言っています。
なぜなら、一億円のお金は国内を流れるだけでなくなるわけではありません。一方、時間と労力は返ってこないからです。
具体的な政策
黒字還付金
3兆ドルの対外純資産を国民に還元するため、一人100万円の黒字還付金をばらまく。ヘリコプターマネーですね。
通貨発行の仕組みを変える
- 政府事業はすべて政府発行通貨で贖う
- これによって、財源論は無意味になります。
- 発行済の国債は、政府発行通貨で返す
- 政府発行通貨によるベーシックインカム
- 民間の資金需要のために、現行の信用創造の仕組みも残す
- 税金は、財源としてではなく、国の思想・考え方を反映するものとして再設計する

土地を公有化する
土地の公有化を数十年(一世代)かけて行います。これによって、土地担保融資という実物価値の裏付けのない通貨の発行を抑止できます。
- 土地の処分権の停止
- 土地は民間には売れないようにする
- そのかわり政府は土地を売りたい人がいたらかならず買う
- 土地は買うのではなく利用料を国に支払って利用する

全体を通して
わたしは、文明が周期的に盛衰を繰り返している、という考え方について興味があり、そのようなことは実際にあると思っています。本ブログでも文明サイクルの記事を書いています。
そのような文明サイクルを考えてみると、大西つねきさんの提唱する政策は、今後実施される可能性が極めて高い、むしろ100%と言っていいと思います。ポイントは、その時間をいかに短縮するかです。時間がかかればかかるほど、世の中の軋轢は大きくなるでしょう。