財政破綻論潰しシリーズ。今回は、「財政破綻という最悪の事態に備えを」への反論です。著者は、小林 慶一郎氏、典型的な財政破綻論者ですね。もはや、財政破綻論者の巣窟のような東京財団政策研究所のサイトです。それでは、引用しつつ反論していきます。
私は財政破綻が近いと言いたいわけではない。しかし、「最悪の事態を想定することをタブー視して、誰もそれを語らない」という現状は、政策論議のあり方としてきわめて不健全である。最悪の事態を想定しないという日本の政策論争の特徴は、日本の大組織に典型的にみられる「無謬性のロジック」によって生み出されている。すなわち、「失敗してはならないのだから、失敗したときのことを考える必要はないし、考えてはならない」。こういう理屈だ。
「誰もそれを語らない」どころか、財務省主導の財政破綻プロパガンダにより、緊縮財政とデフレが20年以上も継続している。国民は困窮し、地方は疲弊している。「タブー視」されているのは、財政拡大の方である。緊縮財政により、日本人の実質賃金は下がる一方である。

次に、小林慶一郎氏は、グラフで日本の政府債務の現状を示しています。
まずここで、日本の政府債務の現状を確認しておきたい。
図1は、G7各国の国内総生産(GDP)に対してその国の政府債務が占める割合(債務比率)を国際比較したものである。日本が他の国々と違っているのは、債務レベルが突出して高く、さらに、右肩上がりで増え続けていることだ。日本の債務比率は250%に迫るが、これは終戦直後のレベルを超えているし、世界の歴史上、先進国が平時においてGDPの200%を超える債務を負った例はない。現在の日本の債務は人類未踏の領域に達しているのである。

(資料)IMF “World Economic Outlook Database”, 内閣府『国民経済計算』
GDPに対する債務比率が他国に比べて高くなっているということは、日本のGDPが他国に比べて成長していないということの裏返しです。
事実、主要国政府の政府支出の推移を下図に示します。

さらに、G7諸国だけで見ても日本はダントツ最下位です。

https://www.imf.org/external/pubs/ft/weo/2019/01/weodata/download.aspx
次に、小林氏は、財務省の予測曲線を示している。
このままいくとどうなるか、という債務比率(粗債務)の長期推計を示したのが図2である。2020年頃までは低金利によって安定しているが、社会保障制度を現状のままにして増税もしなければ、その後には金利負担が徐々に増え、雪だるま式に膨れ上がって際限なく債務比率は増え続ける(図中点線)。その場合、2050年には政府債務がGDPの450%を超えるという非現実的な事態になる。

政府の債務残高というのは、MMT的に言えば、政府の貨幣発行残高です。それは、全く返す必要のないものです。会田卓司氏の記事を引用します。
「日本の借金1200兆円は返済の必要なし」ソシエテジェネラル 会田卓司チーフエコノミスト
「日本には1200兆円ぐらいの負債がある。これをどう返すのかという議論がたびたび出ますが、日本以外に返している国はありません。借金は、返さなければならないというのが日本ならではの考え方なのです」
「しかし、他国には償還ルール自体が全く存在しません。国債を1回発行して永遠に借り換えている状態です。むしろ、返している国などどこにもありません。言わば他の国は60年償還ルールではなくて、60世紀償還ルールです。基本的には金利負担分だけ払っていって、残りは永遠に借り換えしていくというのが普通の経済の状態です」
「日本の歳出のところに国債費の項目がありますが、この中に債務償還費が入っています。他の国で債務償還費が入っている国はありません。なぜなら返さないからです。」「日本がさらにおかしいのはここで債務償還費を13兆円計上しながら、オフセットしても関係ないことですね。実際には60年償還ルールってほとんどワークしてないのです」
「実際にアメリカの予算でも右側の歳出となっており、利払費をグロスではなくネットにしています。日本はもちろんグロスで買い取ります。アメリカというのは財政をとてもよく見せるテクニックがある反面、日本は日本の財政を悪い書き方をしています」
「他の国は、60年償還ルールではありませんし、1200兆円、どうやって返すのかというその考え方自体が普通財政の議論にはないものです。日本は自国の財政の本当の姿を正確に見せた方が良いと思います」
また、小林慶一郎氏の記事から引用します。
いくら債務比率が増え続けても、投資家(主に日本国内の金融機関)が日本国債を買い続ければ経済は回る。なぜ投資家が日本国債を買い続けているのかというと、根本的には、「いずれ日本政府は借金を返してくれるはずだ」と信じているからだ。日本国民は1,800兆円の金融資産を持っているのだから政府の債務が増えても大丈夫だ、とよく言われるが、それは「政府はいずれ国民の資産に巨額の課税をして政府債務の返済にあてるはずだから、国債は破綻しない」と言っているのと同じである。つまり、市場が日本国債を信認しているのは、将来、大増税がなされることを暗黙のうちにアテにしているからなのである。
これは、財政破綻論者の典型的なお金のプール論です。世の中には、一定のお金があって、その中から政府がたくさん使えば民間の分が少なくなるという理屈です。事実は、国債発行は民間預金を増やすのです。全く逆なのです。ここに、財政破綻論者の根本的な間違いがあります。
難しいのは、どのメニューを選んでも、現在世代が大きなコスト(増税による不況など)を甘受するという構造をもっていることである。つまり、財政問題が私たちに突き付けているのは、単に数字の問題を解決することではない。私たちは、「将来世代のために我々がなぜ大きなコストを負担しなければならないのか」という政治哲学的な問いに直面しているのである。
これも財政破綻論のテンプレです。将来世代へのつけ論ですね。このまま緊縮財政が続けば、日本の経済力(モノやサービスを生産する力)が毀損し続け、日本経済まますますシュリンクして、地方のインフラは放置され、結果地方はますます疲弊し、東京一極集中がすすみ、その状態で首都直下型地震が起こったらどうなるか。東京を救う力が地方に残っているのか。財政破綻論こそが将来世代を不幸にします。