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『日本の「財政破綻」は、本当にあり得ない? 政府債務のウソとホント』への反論

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財政破綻論潰しシリーズ。今回は、Newsweek日本版に、2020年08月04日に掲載された加谷珪一氏の記事「日本の「財政破綻」は、本当にあり得ない? 政府債務のウソとホント」です。

 例によって反論の前に、MMTの基本的考えを三橋貴明著「知識ゼロからわかるMMT入門」から引用します。
(1)自国通貨を持つ政府は、財政的な予算制約に直面することはない
(2)全ての経済は、生産と需要について実物的あるいは環境的な限界がある
(3)政府の赤字は、その他の経済主体の黒字

の3つです。
 では、MMTの見地から反論を試みます。

なお、本記事で引用するグラフ(http://mtdata.jp/contents_top.html)は、10年以上財政破綻論と闘っている三橋貴明氏の好意によります。

加谷氏は、終戦直後のインフレを中心に論を展開します。これも、財政破綻論者がよく使う手法です。

太平洋戦争の戦費総額(日中戦争含む)は、当時の国家予算(一般会計)の約280倍(インフレを考慮しても74倍)という途方もない金額であり、戦費のほとんどを国債発行で賄ったことから、GDPに対する政府債務の比率は200%を突破した。

戦争中は物価統制によって見掛け上、インフレは存在しないことになっていたが、現実には深刻な物価上昇が起こっており、終戦でそれが一気に表面化。開戦当時から55年までの14年間で物価は約180倍に高騰している。

経済状況の局面は、インフレとデフレの2つがありますが、インフレになるかデフレになるかは、需要と供給の関係で決まります。

インフレギャップとデフレギャップ

供給力に対して需要が大きいとインフレになります。逆に、供給力に対して、需要が少ないとデフレになります。日本は現在、デフレ状態です。
 終戦直後の日本は、米軍による本土空襲により経済インフラが壊滅的状態でした。したがって、モノ・サービスの供給力は極端に低い状態でした。そこへ、大陸から500万人にのぼる引揚者が帰国しています。当然インフレギャップが拡大して物価は上昇します。戦時中の国債発行とは関係ありません。

終戦後の例でも分かるように、自国通貨建てでも過度な政府債務を抱えれば財政は破綻する。筆者は日本政府が現実に財政破綻する可能性は限りなく低いと考えているが、このまま財政が健全化されない場合、徐々にインフレが進む可能性は高いとみている。

財政の健全化とはなんでしょうか。PB黒字化のことか、GDPに対する単年度政府債務の割合のことか、あやふやです。「徐々にインフレが進」むように、日銀による異次元の量的緩和が実施されましたが、インフレターゲットの2%には程遠い状態です。

日本のマネタリーベース(左軸)とインフレ率・長期金利(右軸)の推移
※インフレ率:食料(酒類除く)とエネルギーを除く総合消費者物価指数
※長期金利:新規発行十年物国債金利                

もし景気が回復しないなかで年率3%のインフレが続くと、金利が上がるので最終的に日本政府の利払い費用は年間30兆円を超える。税収のほとんどが利払いに消え、年金や医療、公共事業、防衛費の維持が難しくなる。

そもそもインフレを金融政策によって起こそうとしても起こりませんでした。景気を回復するためには、実需が必要ですがデフレ状態にあっては民間の投資は期待できないので、政府の財政出動が必要になります。
 2%程度のインフレと適切な金利上昇は、経済成長している状態と言えます。加谷氏は、経済成長はよくない、と言っているのでしょうか。
 また、MMTによれば、税収は財源ではありません。以下に、国民経済のシンクを示します。

国民経済のシンク(水槽)

利払いも、年金や医療、公共事業、防衛費もすべて国債発行によって維持可能です。では、税金の意義とは何でしょうか。上図で分かるように、政府支出と徴税のバランスによって、シンクの水の量(インフレ・デフレ)を調整するのです。
 また、税金には格差是正(所得の再分配)による社会の安定化、社会の調整(炭素税、酒税、たばこ税など)機能があります。

一方、債務の額は10年間で実質的に25%減少するので、財政問題は解決に向かう。緩やかなインフレの場合、多くの国民はその事実を認識できないので、気付かないうちに実質的な預金額が目減りしていく。

今どき「緩やかなインフレの場合、多くの国民はその事実を認識できない」人がいるでしょうか。預金の目減りを防ぐためには、企業は新たな投資(投機ではなく)をし、家計のモノ・サービスの購入が増えるでしょう。それこそ、デフレ脱却ではないでしょうか。停滞し沈んでいた国民経済の血液たる通貨が勢いよく巡り始めることでしょう。

加谷氏は、日本がデフレのままであることが好ましい、と言っているように思えます。

財政に魔法の杖はなく、政府の借金は何らかの形で埋め合わせる必要がある。確かに日本国債は国民から見れば資産だが、インフレによってその価値が減価することで、事実上の増税が行われるというカラクリについて理解しておく必要があるだろう。

自国通貨を発行している国家にとって、政府債務とは本質的には貨幣発行残高のことであり返済の必要などありません。
「日本の借金1200兆円は返済の必要なし」ソシエテジェネラル 会田卓司チーフエコノミスト

ほとんどの国民は「インフレによってその価値が減価することで、事実上の増税が行われる」ほうが、消費税よりもましだと思うのではないでしょうか。

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