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『「日本政府はもっと借金しろ」そんなMMT論者のツケはだれが払うのか』への反論

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『「日本政府はもっと借金しろ」そんなMMT論者のツケはだれが払うのか』は、2020年8月6日にPRESIDENT Onlineに投稿された、藤巻健史氏の記事です。藤巻健史氏は、典型的な財政破綻論者です。この記事に対して、素人の私が反論を試みます。記事の前半は、これと言って反論すべき箇所もない一方的な強弁が続きます。後半から、いくつか引用して反論してみます。
 なお、本記事で引用するグラフ(http://mtdata.jp/contents_top.html)のいくつかは、10年以上財政破綻論と闘っている三橋貴明氏の好意によります。

反論の前に、MMTの基本理論を三橋貴明著「知識ゼロからわかるMMT入門」から引用します。
(1)自国通貨を持つ政府は、財政的な予算制約に直面することはない
(2)全ての経済は、生産と需要について実物的あるいは環境的な限界がある
(3)政府の赤字は、その他の経済主体の黒字

の3つです。
 では、反論を試みます。

MMTは余りに常識に反している。MMT信者は「家計と国家は違う」と言うのだろうが、国家といえども借金は返さねばならない。返さなくてよいのならば、無税国家が成立する。法人税も消費税も所得税も徴収する必要が無い。歳出は借金で賄えばよい。

「家計と国家は違う」まさにその通りです。通貨を発行できる政府とそれを使うだけの家計では、根本的に考え方を変えなければならないでしょう。国債発行は、会計上「負債」に計上されますが、本質的には通貨発行残高です。したがって、政府の負債は返す必要はありません。
「日本の借金1200兆円は返済の必要なし」ソシエテジェネラル 会田卓司チーフエコノミスト

世界で貧国もなくなる。国民の80%が劣悪な貧困状態にあるハイチでさえも借金を無限にしまくって財政出動すれば国が豊かになる。しかし、そんなわけはないのだ。

まさに「そんなわけはない」です。MMTの基本理論の「(2)全ての経済は、生産と需要について実物的あるいは環境的な限界がある」がありますから、「借金を無限にしまくって財政出動すれば国が豊かになる」ことはありません。
 国の経済力(=モノ・サービスの供給力)を超えて通貨を発行すれば、当然インフレになります。

今の日本の財政を家計に例えれば、年収700万円の収入の家庭が今年は1600万円を支出する。今年末に借金額は年1億2000万円に達する。満期がくる借金の返済分を含めて、今年、2530万円の調達が必要だが、このような家計に融資をしてくれる銀行なぞ、まず無い。自己破綻だ。

MMTでは「家計と国家は違う」と言っていることを認識していながら、「今の日本の財政を家計に例え」ているところが、財政破綻論者の面目躍如です。家計に例えるのは財政破綻論者のテンプレです。あまりに多用されてあくびも出ません。

と言いたいところだが、最近の邦銀は保有国債残高を急速に減らしている。(=融資を引き揚げている)国への融資を回収し始めているということだ。

少なくとも、返済見込み0%では国に融資をする気はない。借金額が過大になってくれば、徴税で借金を返してくれるか、だんだん心配になってくるから当然だ。たしかに銀行は入札で国債を購入してはいるが、それは、すぐに日銀に転売し、さやを稼ぐためである。日銀トレードと言う。

 民間銀行が国への融資を回収し始めているというより、日銀が異次元緩和を実施するために、民間銀行から無理やり国債を買い上げているのが真実でしょう。
 国債は、償還(返済)期限がくれば、借り換えるだけです。民間銀行は、古い国債の代わりに新しい国債を受け取ります。永遠にこれを繰り返すわでです。誰も困りません。利払いも、国債で贖えます。民間銀行にしてみれば、利子のつかない日銀当座預金を保有しているよりも、確実に利払いがある国債をもっているほうが理にかなっています。

 2010年末と2020年3月末の日本国債保有者別内訳を示します。

2010年末(速報値)版 日本国債保有者別内訳(総額は727兆円)
2020年3月末時点(速報値)日本国債所有者別内訳

 グラフから分かるように、国債の日銀保有割合が大きく増えている一方、民間銀行は減っています。しかし、保険年金基金の保有割合はあまり変わっていません。最も手堅い運用を要求される保険・年金が、国債を手放さないからではないでしょうか。

すなわちMMT理論では、借金を膨らませている段階で、国債を買い取る中央銀行の存在が、必須条件となっている。しかし、これは過去ハイパーインフレを起こした結果、世界中で禁止されている「禁じ手中の禁じ手」である財政ファイナンス(政府の赤字を中央銀行が紙幣を刷ることによってファイナンスする)そのものだ。

貨幣の発行自体が、インフレを引き起こすことはありません。下図は、マネタリーベースとインフレ率を示していますが、マネタリーベースが増えてもインフレ率は全く上昇していません。

日本のマネタリーベース(左軸)とインフレ率・長期金利(右軸)の推移
※インフレ率:食料(酒類除く)とエネルギーを除く総合消費者物価指数
※長期金利:新規発行十年物国債金利                

インフレかデフレかは、需要と供給の関係で決まります。

インフレギャップとデフレギャップ

日本はずっとデフレーションに苦しんでいます。栄養失調の人間に、メタボが心配だから食べるな、という人がいるでしょうか。

MMTは世界中の先人たちの知恵を否定することに成り立っていることになる。MMTが正当性を証明するためには、財政ファイナンスを行っても、何ら問題が生じないことを証明しなくてはならない。

前記のマネタリーベースとインフレ率、長期金利の関係を示したグラフによって「何ら問題が生じないことを証明」している思います。歴史に学ばないのは、新自由主義者のほうです。それについては、中野剛志著「日本経済学新論」に詳しいです。

黒田晴彦日銀総裁や麻生太郎財務大臣は、私が国会議員時代に質問をした際、「日銀が今やっていることはMMTではない」と否定されている(私は詭弁きべんだと思う)。彼らは「日本をMMTの実験場にしてはならない」とも答弁した。しかし、提唱者のケルトン教授自身が「MMTは日本で実験中」と言っている。

これは、全くその通りです。この30年間の日本経済がMMTの正しさを証明していると言っていいでしょう。
 ただし、金融政策だけでは国民は豊かになりません。一部の投資家が潤うだけです。真に国民経済を豊かにするためには、財政出動という形でMMTに基づいた政策を実行しなければならないでしょう。

日銀が債務超過になったとき、その発行する通貨の価値が保たれるのだろうか? 債務超過の結果、円が暴落すればハイパーインフレ一直線となる。やはりMMTが前提としている「財政ファイナンス」は先人の教えの通り「禁じ手中の禁じ手」だったことになる。そしてMMT理論が「トンデモ理論だった」ことも証明される。

消費に使われない通貨がいくら発行されても、国民経済は何も変わりません。マネタリーベースのほとんど、日銀当座預金です。日銀当座預金は政府・日銀の世界であり、民間預金とは直接関係ありません。日銀当座預金で、直接モノやサービスを買うことはできません。

資料:日本銀行

今現在、硬貨は誰の負債でもない通貨として発行されています。もし政府・日銀の債務超過を会計上なんとかしたいなら、100兆円硬貨でも1000兆円硬貨でも発行し、債務をなくせばいいだけです。そうしたとしても、政府日銀のお金の世界と民間のお金の世界は別物ですから、国民経済は何も変わりませんが。
 新自由主義者の財政破綻論というのは素人が少しMMTを勉強しただけでバカバカしく思えてくるものです。願わくは、多くの日本人が財政破綻論のウソを見抜けるようになりますように。

 政府が、財政出動し実需を計画的に増やせば、民間投資は活性化し日本国民は豊かになるでしょう。

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