遅れる日本のAI(だけじゃない)

日本のAIの第一人者である松尾豊氏はつとに、日本のAIはアメリカや中国に大きく遅れを取っていると警鐘を鳴らしている。

だが、遅れているのはAIだけではなさそうだ。

論文数

国立大学の改革という緊縮によって、論文数が漸減している。それに伴い、論文の引用数も改革前の世界4位から9位に下落した。

これでは科学技術立国の名がすたる・・・どころかこのままでは、途上国並みになってしまう。

科学技術予算

各国の科学技術予算を比較するとアメリカと中国がダントツだ。特に中国の伸びが半端じゃない。これでは、米中に遅れを取るのは当たり前だ。

科学技術は軍事と直結する。特にAIについては「AIを制するものは世界を制する」と井上智洋氏が言っている。言うまでもなく中国は、中国共産党の国である。国家の上に中国共産党がある。そして、世界共産化が党是であるから、この分野での中国の台頭は看過できない。ぶるぶるっ・・・

主要国科学技術予算総額(OECD購買力平価換算)の推移(百万円)
http://mtdata.jp/20190812-1.jpg

BTRONとPEZYの不遇

IT関連で思い出した。思えばBTRONとPEZYは全く不遇であった。私はどちらもアメリカに潰されたと思っている。

BTRONの通商問題

BTRONの通商問題について、Wikipediaから引用する。

1989年4月12日にUSTRが発行した報告書 “1989 National Trade Estimate Report on Foreign Trade Barriers”(「外国貿易障壁報告書」(ISSN 0898-3887)1989年版)内の、日本の貿易障壁についての報告中、セクション7 “7. OTHER BARRIERS” において、「半導体」「光ファイバー」「航空宇宙」「自動車部品」「流通システム」「商慣行(Marketing Practice Restrictions)」「大店法」のようにサブセクションを設けて列挙されたうちのひとつがTRONであった。他が基本的に分野を挙げているのに比べて、特定のシステムの名指しは異様である。

https://ja.wikipedia.org/wiki/BTRON#%E9%80%9A%E5%95%86%E5%95%8F%E9%A1%8C

TRONはオープンアーキテクチャであり、基本仕様は公開されていて、日本国内はもちろん外国の企業でも自由にその仕様を使って製品化ができるようになっていた。そこでトロン協会は5月にUSTR代表あてに文書で抗議し、TRONは非関税障壁から外されたが、ケチがついてしまったということで、BTRONは教育用パソコンから除外されてしまった。

Panasonic BTRON試作機

いまでは、CPUはIntel、OSはMicrosoft Windowsの寡占状態である。TRONプロジェクトは、サブプロジェクトとしてCPUの開発もしていた。もしUSTRのケチがつかなければ、世界のPC市場はBTRONが多くを占めていたのではないだろうか、そのほうが人類は幸せになっていたのではないかと思う。なぜそう思うのかについて次項に書きたい。

PEZY Computing

PEZY Computingは、2010年に齊藤元章氏が設立したスーパーコンピュータ・メーカーである。その実績をWikipediaから引用する。

スーパーコンピュータの絶対演算性能を競う世界ランキングTOP500にエントリーされたスーパーコンピュータの中から1W当たりの演算性能を競う省エネランキングGreen500において、Suiren(高エネルギー加速器研究機構)が2014年11月に世界第2位を獲得。2015年6月のランキングでは、Shoubu(理化学研究所)、Suiren Blue(高エネルギー加速器研究機構)、Suirenが、世界第1位から第3位を独占した。Shoubuはまた、2015年6月から2016年6月にかけてのランキングで、3期連続の世界第1位を獲得した。

https://ja.wikipedia.org/wiki/PEZY_Computing

2017年12月5日、当時社長であった斉藤元章氏と元取締役の2人が、2014年2月に新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO) に対して事業費用を水増し計上した実績報告書を提出し助成金約4億3100万円をだまし取ったとして、東京地検特捜部から詐欺容疑で逮捕された

スパコン開発で、たったの4億円をだましとって何の得があるというのか。

齊藤元章氏は、はめられたと思っている。東京地検特捜部という組織の出自がCIA日本支部とでもいうべきものであるからだ( 東京地検特捜部とはGHQが日本に設置した特殊機関 )。あるいは、緊縮信仰の財務省が予算を出し渋ってでっち上げたスキャンダルである可能性もなくはない。当時、麻生財務大臣がPEZY Computingを視察している。

現代のスーパーコンピュータは、ビルの1フロアを専有して膨大な電力を消費するものが普通である。それに対して、PEZYが開発していたスパコンは、絶対性能は巨大スパコンに劣るものの、省エネで接地面積も研究室に収まるようなものだ。

これが実用化され製品化されれば、スパコンが必要な科学研究は個別にスパコンが利用できるようになり、研究効率が大きく向上するのは間違いない。こういうものに政府が科学技術予算をつけずにどこにつけるというのか。

今の第3次AIブームは、コンピュータの性能向上がその主因の1つとなっている。であれば日本製スパコンの開発と普及は日本のAI研究にとっておおいなる助けとなる。

齊藤氏は「エクサスケールの衝撃」という本を書いている。600ページ近くある大冊であるが、その最後に「我々日本人が次世代スーパーコンピュータを開発する」という章を設けて日本人が次世代スーパーコンピュータを開発する意義について書いている。

齊藤氏は日本人が次世代スパコン開発で世界をリードすべき理由として、次の10項目を挙げている:

  1. 実現する力と実績
  2. 成果を応用する力
  3. 活用を拡散し、運用を継続する力
  4. 正しい方向に使用する道徳観念
  5. 持たざるときも、持ち得るときも、平常心を保つ力
  6. 利他の精神と、無限に分け与える度量
  7. 驚異的な改革をも短期間で成し得て吸収する、革新性と受容性
  8. 過去の侵略戦争への本当の意味での補償
  9. 和を以て貴しと為し、そして瑞穂の国の世界を希求する国民性
  10. 何の制約もしがらみもなく、新しい世界を創出するための要件を備えた唯一の国

ここでは、一つ一つについて詳しく書かないが、特に4、6、9が重要だと思う。日本人の稀なるメンタリティ故に、日本がスパコン開発ひいてはAI開発をリードすべきだと思うのだ。中国がリードするよりも日本がリードしたほうが人類は幸福になる。

亡国のメガロポリス

三橋貴明著「亡国のメガロポリス 日本を滅ぼす東京一極集中と復活への道」(彩図社)を読んだ。 あいかわらず著者の熱が伝わってくる。 印象に残った部分だけを書いてみる。

まず、著者ならではデータのグラフ化によって東京圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)への人工流入と地方から人口流出の事実が示される。

東京一極集中の最大のデメリットは、災害に対する脆弱性であるとする。今後30年以内に首都直下型地震が発生する確率は70%、南海トラフ巨大地震が発生する確率も70~80%である。東京一極集中の状態で首都直下型地震が発生したら日本国全体が危機となる。

東京一極集中が少子化に拍車をかける

東京圏の出生率は全国最低である。若者が東京へ来ると子供を産まなくなる。20年に渡るデフレと実質賃金の低下により結婚できないのである。東京圏の子育てコストの高さもある。

公共投資額は南関東がトップ

地域別公共投資出来高の推移  http://mtdata.jp/data_59.html#CHIIKI

上のグラフは三橋氏のサイトから引用したものである。南関東が圧倒的に多いのがわかる。東北は震災後に急増しているがすぐに下がっている。2016年からは、南関東のほうが多い。緊縮財政下で財務省の「選択と集中」が行われているのである。 「選択と集中」 は経営では有効だが、政府が国民に対して 「選択と集中」 をしてはならない。

交通網の拡充

東京一極集中を解消するためには、交通網の拡充が鍵となる。新幹線の基本計画をすべて実施すること。高速道路網の拡充である。これによって、地方と東京圏が市場的に連結し、連結した地方は発展する。具体例として、北陸新幹線を挙げている。北陸新幹線開業による金沢の発展は、開業前の予想を遥かに上回っている。

さらに、交通網を拡充することにより、災害によって分断された箇所があっても迂回ルートが確保されることになるため、災害支援に支障をきたす可能性が激減する。インターネットと同じ発想である。

緊縮がすべてを潰す

交通網の拡充のためには、民間の投資だけでは不足であり、政府の積極的財政出動が必要であるが、例によって財政破綻論からくる緊縮財政がネックになる。
緊縮による地方交付税交付金の減額も地方の衰退に拍車をかけている。

MMTを軸としたマクロ経済の理解が広がる必要がある。

巨大不明生物統合対策本部副本部長・矢口蘭堂「必ず間に合わせるんだ。諦めず、最後までこの国を見捨てずにやろう」

財務省の歴史レトリック

三橋貴明著「知識ゼロからわかる MMT入門」(経営科学出版)を読みました。本書は、一般には販売されていない本のようです。購入には、著者のサイトから申し込む必要があります。Amazonでは、中古品として販売されています。

その中で印象に残ったものの一つが財務省が作成した戦後の財政の図解です。それによると昭和39年までが均衡財政期とし、それ以後を不均衡財政期としています。

財務省HPよりhttps://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia270930/01.pdf

昭和39年といえば東京オリンピック開催の都市です。そして、東京オリンピックに向けて 多くのインフラが整備されました。

  • 東海道新幹線
  • 東京モノレール
  • 東京国際空港の拡張
  • 首都高速道路
  • 名神高速道路
  • など

これだけのインフラ整備をしていますが、上記の図によれば公債不発行となっています。 このからくりを 佐藤健志氏が 三橋TVで解説していますので、御覧ください。

つまり戦後の日本は、ガリオア・エロア資金と世界銀行からの資金援助で復興を遂げたのであり、東京オリンピックに向けてのインフラ整備はこれらの資金によって可能になったということです。
 ガリオア・エロア資金とはアメリカが占領地に対して与えた資金ないし援助です。
GARIOA:Government and Relief in Occupied Areas 占領地域統治救済資金
EROA: Economic Rehabilitation in Occupied Areas 占領地域経済復興資金
日本へのガリオア・エロア資金は、現在のお金にして12兆円(内、9.5兆円は無償つまり贈与)ほどです。

また、世界銀行からは現在のお金にして6兆円の資金援助を受けていました。世界銀行への返済が完了したのは、1990年7月のことです。

重要なのは、ガリオア・エロア資金も世界銀行の支援もドル建てだったということです。

つまり、財務省が均衡財政と言っている期間のほうが実は財政破綻の可能性があったということです。なぜなら、自国通貨建ての政府債務は破綻しようがないからです。

では、なぜ財務省の図解には、ガリオア・エロア資金や世界銀行のことが表現されていないのでしょうか。それは、これらのドル建て債務は特別会計の方に計上されているからです。財務省の図解はあくまでも一般会計についてのものなのでガリオア・エロア資金、世界銀行への債務は書かれていないというわけです。

こんなことまでして財務省は財政破綻論というプロパガンダを広めようとしているわけです。

財政主権を財務省から取り戻すには、政治によるしかありません。政治を変えるためには政治家を変えなければなりません。政治家を変えるためにはそれを選ぶ国民が変わらなければなりません。財務省のご説明部隊は、マスコミや政治家に恒常的に働きかけているようです。したがって我々国民は、マスコミに登場する財務省の御用学者、経済評論家に騙されることなく、マクロ経済を正しく理解する必要があります。

巨大不明生物統合対策本部副本部長・矢口蘭堂「必ず間に合わせるんだ。諦めず、最後までこの国を見捨てずにやろう」

危険な踏切1479箇所

2019年9月9日のテレ東WBSで、先日の京急神奈川新町駅付近での踏切事故を受けて、この問題について深堀りしていた。

2016年に国交省が発表した資料によると全国ですぐに対策が必要な踏切は、1479箇所になるそうだ。東京都だけで 375箇所ある。

番組では、東武伊勢崎線竹ノ塚駅の踏切の例を取り上げていた。この踏切は開き始めてわずか4秒後には閉まり始める。過去に歩行者2人が死亡する事故があり、現在高架化工事中である。東京都の優先順位を待っているとなかなか準備に踏み切れないため足立区主導で工事をすることにしたという、足立区の住民21万筆の署名も集まっている。総事業費は630億円で、それを足立区と東武鉄道で負担、国と都からも補助があるそうだ。

東京都の優先順位については詳しい説明がなかったが、想像するに一つは財源の問題。もう一つは供給力、つまり高架工事のできる業者の数の問題である。
1つ目の財源について、このような人命にかかわるものについては国が予算をつければいいだけの話だが、緊縮信仰の財務省が阻んでいるのは想像に難くない。
2つ目の供給力について、橋本政権以来の公共投資削減で、土木建設業者の数はピークに比べて23%も減少している。
どちらも緊縮財政が深く関わっている。緊縮財政は、国民の命を危険に晒しているのだ。

早いとこ緊縮財政を終わらせてMMTに基づいた政策が実行されなければならない。巨大不明生物統合対策本部副本部長・矢口蘭堂が言ったように「諦めず、最後までこの国を見捨てずにやろう」

徳川宗春

「徳川宗春伝 名古屋に日本一の繁栄をもたらした名君」を読みました。日本はマンガがあるからいいね。徳川宗春は、徳川八代将軍吉宗の享保の改革(緊縮財政)でどん底にあって江戸を尻目に、積極財政で尾張藩を大いに発展させた人です。

NHKと民放各局に、宗春を題材としたドラマの製作要望を出しました。松竹にも映画化要望を出しました。松竹は、「武士の家計簿」、「武士の献立」、「殿、利息でござる!」、「超高速!参勤交代」と経済時代劇シリーズを出してますからね。
そして、実はNHKは、『英雄たちの選択 「すべては民のために!“名君”徳川宗春の挑戦」』という番組を2016年5月19日に放送しています。しかし、NHKオンデマンドでも公開ライブラリーでも出てきません。財務省からの圧力があったのでしょうか?

財務省が日本を滅ぼす

三橋貴明著「財務省が日本を滅ぼす」(小学館)を読みました。著者は具体的なデータをもとにわかりやすくグラフ化してくれるので説得力があります。財務省の御用学者たちの抽象的でわけのわからない言説とは違います。

グローバリズムのトリニティ

グローバリズムを推進する政策パッケージは次の3つであるとしています、「規制緩和」「自由貿易」「緊縮財政」。緊縮財政により従来政府や公共機関が提供していたサービスが提供できなくなり、そのサービスについての規制を緩和し、己の利益のことしか考えないハゲタカ外資が参入するという構図です。

それによってサービスが向上すればいいのですが、すべてサービス品質が低下しかつ価格が上がります。利益最優先ですから当然です。

「プライマリーバランス黒字化目標」という大愚策

プライマリーバランスとは、国債の利払いと償還以外の国の歳入と歳出のバランスのことです。税収の範囲内で予算を組めということです。国家経済は家計とは違います。家計や企業では収入と支出のバランスをとるのは正しいですが、通貨発行権を持つ政府は全く違います。

なぜ財務省は緊縮財政にこだわるのか

財務省が緊縮財政にこだわるのは大蔵省時代からであり、それは経済学の誤りに基づいているとしています。

財務省の下部組織として国税庁があり、国税庁は捜査権を持つ警察力です。財務省の緊縮路線に反対する論陣を張ったマスメディアには容赦なく国税の税務調査が入るそうです。政治家も財務省に逆らうと地元の予算が削減されます。財務省以外の官庁も財務省に逆らうと予算が削れらます。

残る希望としては、2014年に内閣人事局が設置されたこととしています。内閣人事局はキャリア官僚の人事権を持ちます。これを利用して「国民経済の成長に貢献した官僚を、トップに就ける」ことが可能であるとしています。